プロデューサー/エンジニアとして、向井秀徳(ZAZEN BOYS)や ASIAN KUNG-FU GENERATION など、多くのアーティストを手がけてきた山根アツシ氏。氏のホームグラウンドである『Altophonic Studio』には、iLoud シリーズを組み合わせた7.1.4ch のモニター・システムが設置され、近年は Dolby Atmos/イマーシブ・コンテンツの制作にも積極的に取り組んでいます。
スタジオ・オーナーの山根アツシ氏にお話をお伺いしましたので、その抜粋をお読みください。
「音楽のイマーシブ・ミックス」に可能性を感じるようになった
“イマーシブ・オーディオに関しては、音響技術としてはずっと興味があったのですが、自分が手がけているようなロックやポップスに必要なのかなとずっと感じていたんです。2000年代初頭に音楽のサラウンドが流行った時期がありましたが、あのときと同じ少し否定的な感覚というか。
でも技術的な興味はあったので、ベルリンから日本に帰ってきた2019年くらいから、WOWOW の入交さん(注:入交英雄氏)が主催していたワークショップに参加するようになったんです。そしていろいろと研究を重ねているうちに、この技術を使えば、1970年代の音楽のようなコーラス・ワークを聴かせることができるのではないかと、凄く可能性を感じたんです。
最近の音楽は、無理に2つのスピーカーに収めようとして、何でもかんでもレイヤーさせて分厚くするアレンジになっていますから、昔の音楽のようなコーラス・ワークを聴かせることができない。しかしイマーシブ・オーディオならば、無理に2つのスピーカーに収める必要がないわけですから、これまでよりも自由な発想で音を作ることができる。1本のスピーカーが歪み始めるまでのキャパシティもまったく違いますし、その辺りに気づいてから、「音楽のイマーシブ・ミックス」に可能性を感じるようになったんです。
なのでエンジニアというより、アレンジ的な視点でイマーシブ・オーディオに可能性を感じたんですよね”
『Altophonic Studio』のモニター・システムは、フロント LR が iLoud Precision 6、サラウンド・レイヤーの5本が iLoud MTM、ハイトの4本が iLoud Micro Monitor という構成で、すべてオーディオ・インターフェースとダイレクトに接続されています。
パッとセッティングしただけで、凄く良い音が鳴ってくれました
“最初は、Apple Music の空間オーディオの楽曲を聴くところから始めようと思い、iLoud Micro Monitor を手持ちのサブ・ウーファーと組み合わせて7.1.4ch のシステムを組んでみたんです。そして実際にミックスを始めてみると、もう少しパワーが欲しくなってサラウンド・レイヤーだけ iLoud MTM に入れ替え、そして最近、フロント LR 用に iLoud Precision 6 を導入しました。
- Left and Right: iLoud Precision 6 (x2)
- Center: iLoud MTM
- Left and Right Surround: iLoud MTM (x2)
- Left and Right Rear Surround: iLoud MTM (x2)
- Left and Right Top Front Overhead: iLoud Micro Monitor (pair)
- Left and Right Top Rear Overhead: iLoud Micro Monitor (pair)
経験上、Dolby Atmos のセットアップでは指向性があまり強くないスピーカーの方が合っていると思っているので、指向性がそれほど鋭くない iLoud シリーズは、イマーシブ・スタジオには最良の選択だと思っています。実際、スピーカーのチューニングにはかなり苦労するのではないかと思っていたのですが、このシステムはパッとセッティングしただけで、凄く良い音が鳴ってくれましたから。
それと iLoud シリーズは、軽量でマイク・スタンドに立てられるなど、設置の自由度が高いのもいいですね。iLoud Micro Monitor などは凄く小さいので、天井が高くない部屋のハイト・スピーカーとして最適です。このシステムのように違うランクのモデルを組み合わせても、特性がある程度揃っていますし、こういう小規模なスタジオにイマーシブ・システムを組むのであれば、現状 iLoud シリーズ一択なのではないかと思っています”
iLoud Precision 6と iLoud MTM は、内蔵の ARC System によるルーム・コレクション機能も活用。iLoud Precision 6では、その精度がさらに向上していると高く評価しています。
iLoud PrecisionのARC補正は、精度が向上している
“オーディオ・インターフェースとして使用している Avid Pro Tools | MTRX Studio にも補正機能が入っているので、最初に ARC キャリブレーションでおおまかなチューニングを行い、Pro Tools | MTRX Studio でそれを追い込むという使い方をしています。2段階で DSP を使って音質的にどうなのかという意見もあるかもしれませんが、iLoud シリーズは ARC キャリブレーションありきで音色が作られているスピーカーだと思っているんです。
新しい iLoud Precision 6の ARC キャリブレーションは、複数ポイントでの測定になったので、これまで以上に精度が向上している印象です”
音楽のイマーシブ・オーディオに、かなりの可能性を感じていると語る山根氏。今後は360 Reality Audio にもチャレンジしていきたい語ります。
イマーシブは曲を書く人が主体になれるフォーマット
“360 Reality Audio は、ヘッドフォン・リスニングだけを考えればいいわけですから、Dolby Atmos よりもシンプルだなと思っているんですよ。Dolby Atmos の場合は、いろいろな聴かれ方を想定して作業しなければなりませんからね。ボトム用スピーカーとしては iLoud Micro Monitor を考えていて、床に2本置いて始めてみようと思っています。
これまでミックス・エンジニアは、「混ぜる」ということを念頭に Pro Tools に向かっていたわけですが、イマーシブ・オーディオでは「広げる」ということを念頭に音を作っていかなければならない。ですので、ぼくはエンジニアというよりアレンジャーとして大きな可能性を感じていて、イマーシブ・オーディオは曲を書く人が主体になれるフォーマットだと思っているんです” —山根アツシ
取材協力:ICON | photos: Takashi Yashima
iLoud MTMの価格と購入方法
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iLoud MTM (Black):希望小売価格 69,300円(税込)/1台
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iLoud Micro Monitor (Black):希望小売価格 60,500円(税込)/ペア
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